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「『踊る大捜査線』でわかったヒットの法則」フジテレビジョン執行役員常務 映画事業局長 亀山千広氏(下)(2007/07/27) [フジテレビジョンネットワーク]

クリエイティブな才能と聞いて、まず思い浮かぶのが企画力ではないだろうか。一般のビジネスマンにとっても、企画書作りは頭の痛い作業に違いない。新規事業の立案は言うに及ばず、営業でも「提案型」のスタイルが増えるなど、あらゆる職種で企画能力が問われるようになったからだ。

 言うまでもなく、プロデューサーにとっても企画力は重要なコンピテンシーだ。



「僕の場合はいわば〝企画のタネ〟を作るのが仕事」と語る亀山千広氏(写真=須藤夕子)

 亀山氏は、「企画といっても、僕の場合はいわば〝企画のタネ〟を作ること、30文字程度で語れるような、わかりやすいコンセプトを考えることが仕事です」と話す。「グダグダと説明しなきゃ相手に伝わらないような企画は『商品』にならない」とか。たとえば、ドラマ版の『踊る大捜査線』のコンセプトは、「サラリーマン刑事(デカ)」だったという。

 「警察官もサラリーマン、公務員であって、刑事ドラマに出てくるようなヒーローじゃないんじゃないか、というのが原点。しかも、ごく一部のキャリア組がノンキャリア組を支配する警察の二重構造がある。それをノンキャリの視点から、コメディーとして描きたいと。僕らは『おちゃめな社会派』だと言ってましたね」

 そのコンセプトを軸に、脚本家、監督とやりとりをしながら、企画を膨らませていった。過去の刑事ドラマも研究した結果、「『太陽にほえろ!』のような作品を作りたい」と、会議で全員の意見が一致したのだ。

過去の人気作の一部を〝禁じ手〟に

 「でも、そのままマネをしても『太陽にほえろ!』は越えられない。そこで『太陽にほえろ!』で印象的だった部分を、すべて〝禁じ手〟にしたんです」

 そのとき決めた主な〝禁じ手〟は、次の4つだ。(1)仲間にアダナをつけない。(苗字または役職で呼ぶ)(2)張り込みなどの捜査シーンを(音楽をつけて)描かない。(3)犯人に感情移入をさせない。(4)ボスの周りに集まり、「ほら、逮捕状だ!」といった捜査会議の描き方はしない。(捜査会議をやるなら、100人規模のきちんとした捜査本部を作る)

つまり、警察という組織のリアリティーを追求したわけである。それが、今までの刑事ドラマにない新鮮な魅力となり、熱狂的なファンをつかんだ。

 「かつて人気のあった作品の一部を〝禁じ手〟にすることで、その作品の持つポピュラリティーを維持しながら、新しさも生み出せる。なつかしいけど新しい、みたいな。逆に『先駆』というのはマイナー。まったく新しいものは、受け入れられるのに時間がかかりますからね」。この思考法は、新商品の開発などでも活用できるのではないだろうか。

 ただし、亀山氏は、続編のような企画は好まないという。「飽きっぽいもんですから、わざと変える。変えて失敗することもありますけど、以前と同じものだと、作っていてわくわくしないんですよ」

 たとえば、『あすなろ白書』と『ロングバケーション』は、ともに恋愛ドラマであり、脚本家(北川悦吏子)も同じだが、『あすなろ』では「好きだ」という台詞を連発したのに対し、『ロンバケ』では、あえて「好きだ」という台詞を封印した。「『好きだ』と言わない恋愛ドラマは成立するか」という課題に挑戦したわけだ。

親しみやすさへの訴求



9月8日公開予定の「HERO」©2007 フジテレビジョン・東宝・J-dream・FNS27社

 こうしたテレビドラマのプロデューサーとしての経験が、映画製作でも活かされる。前回もふれたように、98年『踊る大捜査線 THE MOVIE』の予想外の大ヒットには、当初戸惑ったが、「あとで冷静に分析すると、なるほどなぁと納得する部分はありました。ヒットの法則のようなものがつかめたんです」と話す。

 まずひとつはキャラクターだ。連続ドラマを制作、放送するうちに、主役の青島刑事だけではなく、すべての登場人物がキャラクター化されていたのである。演じる側も、役に自分を重ね合わせて、キャラを育てていた。映画という新たな土壌を与えることによって、それが一気に花開いたのだ。

 もうひとつは、親しみやすさへの訴求である。シネコンの普及で、映画はわざわざ見に行くものではなく、手軽なエンタテイメントになった。「サンダル履きで映画に行けるようになると、『親しみやすさ』が重要になる。そこで、テレビで見慣れたキャラクターであることや、生活空間でお客さんをその気にさせる手法が効果を上げるんです」

 公式ウェブサイト、書籍、主題歌、ドラマ版DVDなど、日常生活のあらゆる場面で、映画の関連情報に触れられる状況を作った。特に、ネットの果たした大きかったようだ。

 『踊る大捜査線 THE MOVIE2』では、1作目よりもさらに手を広げてプロモーションを行った結果、グッズの売上げなどを合わせて、かなりの規模のマーケットが生まれたという。「最初からマーケティングをして、仕掛けたわけじゃないんですよ。以前から予兆はあったので、すでに存在したマーケットを掘り起こした、という感じですね」

かくして、映画事業は、テレビ局としても本腰を入れて取り組むべきビジネスになった。日本テレビが製作した『デスノート』が昨年大ヒットするなど、他局も映画に力を入れはじめている。「映画は一種の投資物件なので、テレビ番組よりもビジネスの仕組みがわかりやすい。いちばん収益性が高いところに売るのが基本だから、メディアも選べるし、極論すればテレビ局も選べるんですよ」

 クリエイティブ面では、視聴率競争で磨かれたノウハウを生かし、親しみやすい娯楽映画作りに徹する。「こういう映画もあっていいんじゃないかと思っています。文化や芸術というものを意識しはじめたら、僕らは違うところに行ってしまう気がするんです」

 今年、『踊る大捜査線』級のメガヒットが期待されるのが、『西遊記』や『HERO』だ。これまでのノウハウを活かした派手な話題作りが展開されているのは、ご存知の通り。



公開中の「西遊記」©2007 フジテレビジョン・東宝・J-dream・FNS27社

 「どちらの作品も僕らにとってはキラーコンテンツです。せっかくの機会なので、風呂敷を広げて、やれる範囲のテストケースはあの手この手でやってみようと。それでデーターも集まりますからね。ただ、あまり騒ぎすぎると辟易しちゃうので、ある程度は焦らさないといけない。その頃合いが難しいですね」

バランス感覚を備えたオタク

 製作本数が増えた今、若手プロデューサーの育成も欠かせない。プロデューサーとして安心して任せられるのは、「〝オタクころがし〟ができる人」だという。その意見に、なるほど、と膝を打った。

 「映像の周囲に集まっているのは、皆オタクですからね。僕の仕事の大半は、オタクと呼ばれる人たちに救われてる。好きなこと、得意なことに没頭できるので、彼らは喜んで仕事をしてくれるんです。つまり、オタクをうまく束ねる人が、プロデューサーともいえる。その場合、当のプロデューサーにも、オタクの血が流れてないといけないんですよ。MBAや弁護士が増えて、ハリウッドがダメになった理由もそこじゃないかと。もちろん僕もオタクですよ……フィギュアにも一時はまったし(笑)。オタクはスペシャリストですが、これからはジェネラリストの面を持つ、バランス感覚を備えたオタクが、存在感を増すのではないでしょうか」

 プロデューサーとは「バランス感覚を備えたオタク」なのだと納得した。

亀山 千広氏
 フジテレビジョン執行役員常務 映画事業局長。1956年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中に、映画監督・五所平之助の書生を務める。1980年フジテレビ入社。編成部および第一制作部を経て、編成制作局長に。2003年映画事業局長に就任。『踊る大捜査線 THE MOVIE』シリーズをはじめ、『スウィングガールズ』『ローレライ』『LIMIT OF LOVE 海猿』など、数々の大ヒット映画の製作を手がける。


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