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キーパーソンに聞くフジテレビ逆転のシナリオと「ほこ×たて」成功の秘密 [フジテレビジョンネットワーク]

@DIME 2月21日(木)9時36分配信

04~10年まで7年連続で視聴率3冠王( 19 ~22時のゴールデンタイム、19~23 時のプライムタイム、6~24時の全日)を獲得していたフジテレビ。ところが、3年前この座から転落……。そこで、若い人材を積極的に起用し、攻めの姿勢で改革に乗りだした。先頭に立って指揮をとる編成制作局長の荒井昭博さんに話を聞いた。

■逆転のシナリオは、1.オリジナリティー、2.視聴者に見透かされない演出、3.世界に通用するコンテンツ

「去年の10月改編のテーマはオリジナリティーの追求でした。多チャンネル時代で、視聴者が次々とチャンネルを変えていく視聴習慣の中では、フジテレビのカラーを強く打ち出すことが大切。では、そのフジテレビらしさとは何かというと、楽しくなければテレビじゃないに尽きる。これがうちの憲法だと思っています」

 例えば、平日23時台のバラエティーは「COOL TV」と名づけ、大きく改革した枠のひとつ。デジタルとの融合を掲げ、YouTubeにオリジナル動画を配信するなどの取り組みも行なっている。

「COOL TV枠は、番組を入れ替えて常に活性化させていきます。人気が出たからといって長く定着させる枠とは捉えていません。新しい番組、新しいクリエイターを次々と試していきます」

 視聴率3冠王時代の7年間を分析すると、前半4年はバラエティーでは『トリビアの泉』(02年~)、ドラマでも『ウォーターボーイズ』(03年~)や『ガリレオ』(07年~)など、オリジナリティーあふれる番組が生まれていた。だが、後半2~3年は3冠王を死守するための弊害もあったと反省する。

■3冠王転落の今こそ再び攻めへ

「視聴率3冠王の時期は、各局が一斉に攻めてくるので、全方位外交を敷かなければならなかった。各局それぞれ特徴があって、その中で全部の週に勝ち続けるのは容易ではありません。どうしても、人気番組を拡大したり、勝てるコンテンツに頼ってしまった部分は少なからずありました。そこで、新しいものを作ろうという原点にもう一度立ち戻り、今年も攻勢をかけます」

 オリジナリティーを生み出すには、1.企画力の新しさ、2.出演者の新しさ、3.作り手の新しさが必要だという。3つ揃うのは難しいが、このうち最低1つを取り入れて、新たにフジテレビらしい番組を作っていく腹づもりだ。

 作り手の新しさでいえば、すでに多くの若手に機会が与えられている。例えば、去年の4月クールの連続ドラマでは、『鍵のかかった部屋』の小原一隆、『カエルの王女さま』の渡辺恒也、『未来日記』の藤野良太と、フジテレビ制作の連続ドラマ5枠中3本に、30歳前後の若いプロデューサーを登板させた。そして、『鍵のかかった部屋』は、画面が急に暗転したり、オープニングにミステリーのヒントが隠されている演出など、作り手のアイデアも高評価を得て、平均視聴率16%というヒット作に導いている。ちなみに、日本テレビが制作する19~23時台の連続ドラマは2本。これと比較すると、フジテレビの5本がいかに突出しているかがわかる。荒井さんはこの5枠に意味があるといい、若手を積極的に起用するためにも、5枠を死守していきたいと語る。

■クリエイター育成には「ゼロイチ」をどうやらせるか

 企画を立案する編成部にも新人を育成するための制度がある。入社1~2年目の社員に深夜や早朝などの特別枠を完全にまかせてしまうニュービーム企画だ。

「まずはバッターボックスに立たせてしまって、1から企画を立案させます。教育問題をやりたいのであれば、教育系のドキュメンタリーに強い制作会社を紹介したり、そうした周辺環境を整える手伝いはしますが、発想やプランニングはすべてひとりでやらせます。0から1にするのはまかせて、1から5にするのは手伝って、最後5から10にするのはまた自分で行なわせる。クリエイターを育てるには、ゼロイチをいかにやらせるかだと思いますね」

 そして、失敗した者にこそ、できるだけ早くもう一度チャンスを与えることも忘れない。そんなニュービーム企画からゴールデンタイムを支える番組も生まれている。現在、土曜19時~放送中の『超潜入!リアルスコープハイパー』だ。ニュービーム企画として、09年1月3日の深夜に初めて特番として放送。大人の社会科見学をコンセプトに、コンドーム製造工程などにカメラが迫り、好評を博した。その後、特番、深夜レギュラーを経て、ゴールデンタイム昇格を果たしたのだ。

■28~38歳の豊富な制作陣が新しいフジテレビを牽引

 こうした人材育成の試みが功を奏し、現在ドラマ班、バラエティー班ともに、28~38歳くらいの制作者の層が実に厚いのだという。

「若手芸人が共演する『ピカルの定理』(水曜22時~)は、31歳の福山晋司がほぼひとりで演出を行なっています。10月に復活させた『アイアンシェフ』や特番の芸人大喜利王決定戦『IPPONグランプリ』の演出&プロデューサーの竹内誠。彼は豪華なセットを使うのが得意で芸術的センスがいい

 プロデューサーの小仲正重にはクイズ番組『ネプリーグ』(月曜19時~)を新しくさせたり、4月からの新番組の立ち上げをまかせている。『笑っていいとも!』には30歳の河本晃典が新プロデューサーに加わりました」と胸を張る。組織を活性化させる時には絶対的に若手の力が必要と力説する一方で、安定感あるベテランの力も忘れてはいない。

「時代劇などの哀愁ある奥深い絵はベテランでないと撮れません。要は組織の中のバランスが大事なのですが、若手に元気がなければその組織に未来はありません」

 アラフォーの読者なら、小学生の頃に『オレたちひょうきん族』に夢中になり、中学時代に『夕やけニャンニャン』に熱狂し、大学時代に『カノッサの屈辱』などのエッジの利いた深夜番組で夜更かしした人も多いはず。かつて、フジテレビの番組は視聴者を画面に釘づけにする力を持っていた。実は、あの頃と同じように高い熱量を持った番組はたくさんある。荒井さんは働き盛りのDIME世代向けに知的探究心をくすぐる『ほこ×たて』『ヌメロン』『ソモサン⇔セッパ!』の3本を推す。

「そのほか、意外かもしれませんが、『笑っていいとも!増刊号』と『めざましテレビ』(月~金曜5時25分~)も見ていただきたい。『笑っていいとも!』は、おもしろい素人やサブカルで活躍する著名人、流行の言葉など、今を切り取る情報が満載。『めざましテレビ』のニュースは突っ込んだ取材をしていて、実は硬派なんです」

 そして、現在、オリジナリティーの追求と同じくらいこだわっているのが、視聴者に見透かされない番組づくりだという。演出面でも改革に乗りだした。

「1位の発表の前に必ずCMが入る、CM明けにまた30秒くらい戻って再開する。そういったことが続くと視聴者は離れてしまう。時にはいきなり1位を発表してしまってもよい。そろそろ視聴者に見透かされずに、いい意味で裏切るくらいの演出をしていかなければならない。そうしたもののひとつに真剣勝負があると考えています。サッカーワールドカップの予選が視聴率30%取るように、結末のわからないものに対する興味は尽きませんよね」

 確かに『ほこ×たて』が成功したのは、矛盾する2つのものが真剣勝負する姿を真摯に見せたから。スポーツの試合を見ているかのような一種独特な高揚感がある。

■世界に通用する番組でクールジャパンの先兵に

 ライフスタイルや価値観など、ここ数年で日本人のスタンスは大きく変貌した。メディアの作り手としてどう分析しているのか。

「5年前、YouTubeはテレビにとって外敵だと思われていましたが、今は連携の時代に入りました。SNSはリアルタイム視聴への誘導に親和性があると実証されてきている。実はスマホの発達は我々にとって追い風なんです。デバイスが次々と増える中で、僕ら放送局ができるのは強いコンテンツを作ること。ネットでも様々なニュースが配信されていますが、放送局の強さはニュースひとつとっても自分たちでしっかりと掘り下げて取材をしていることではないでしょうか」

 ドラマにせよ、バラエティーにせよ、質が高いといわれる日本のテレビ番組。だが、評価されるのはアニメばかり。強いコンテンツで国内のみならず、世界を席巻してほしいもの。2年前に荒井さんが、番組販売でベトナムを訪れた時、『おしん』以来、日本のドラマが全く放送されていないことを知り、大変なショックを受けたのだとか。

「海外に出ていけるストロングコンテンツを作らなければと痛感しました。良質なドラマをそのままの形で放送する。『アイアンシェフ』のようにバラエティー番組をフォーマットとして販売する。もっと言えば海外で現地スタッフたちと一緒に制作する。形はどうあれ、世界に通用する日本のテレビ番組として、クールジャパンの先兵となって、日本人が自信と勇気を取り戻すきっかけになれればうれしいですね」


■フジテレビ編成制作局長・荒井昭博さん
1962年生まれ。85年にフジテレビに入社。92年『夢がMORIMORI』を立ち上げ、当時無名だったSMAPを起用。95年『笑っていいとも!』プロデューサーに。その『SMAP×SMAP』など、多数の人気番組を手がけ、07年に編成部長。11年6月より現職。
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