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サムスン「ギャラクシーS4」、日本攻略の成算 李英熙・副社長に聞く

世界最大のスマートフォンメーカーである韓国サムスン電子。同社のフラッグシップモデル、「ギャラクシーS」シリーズの最新機種「S4」が5月23日、日本でも発売となる。
サムスンは3月14日に米国ニューヨークでS4を初披露。その後、ワールドツアーと銘打って、4月中旬以降、世界主要都市でS4の発表イベントを開催してきた。4月16日 ロンドン、17日モスクワ、18 日香港、23日シドニー、23日イスタンブール、25日ソウル、ニューデリー、ヨハネスブルク、4月30日にはリオデジャネイロ、といった具合にだ。
そして、最終開催地となったのが、東京である。5月16日、東京・日本橋で発表イベントが開かれた。サムスンは今後、日本市場をどう攻略する算段なのか。ワールドツアーに合わせて来日した無線事業マーケティング部門の李英熙(イ・ヨンヒ)副社長に、日本におけるシェア拡大戦略を聞いた。

――S4の話の前に、昨年4月に日本で発売した「ギャラクシーノート」についてお伺いします。この1年をどう評価していますか。

日本は非常に難しいハイレベルな市場です。競争構造がグローバルマーケットとは違う。サムスンとしては、チャレンジングなマーケットだと認識しています。これまでのところ正直言って、苦戦しています。


サムスンが昨年、日本で発売した「ギャラクシーノート」ただ、米国では一定の地位を確立しています。先日ニューヨークに行って、『華麗なるギャツビー』の試写会に出席し、いろいろなセレブリティに会いました。主演のレオナルド・ディカプリオ、監督のバズ・ラーマン、そして有名な歌手であるトニー・ベネットがギャラクシーノートを使っていました。単に持っているだけではなく、絵を描くなどして使いこなしています。一度好きになると、マニアのレベルになるまで夢中になる人が多いのがこの製品の特徴だと思います。

――新しいカテゴリーを作ることができた、と。

一度、好きになると普通のスマートフォンには戻れない、というエグジット現象と呼ばれる現象が起きています。ボリュームでみると圧倒的にスマートフォンのほうが大きいのですが、確たるカテゴリーができたと考えています。

ノートは実際に体験してもらうことが重要です。フランスでもノートは売れているのですが、「スタジオ」という名称で、実際に触れるようにしています。スタジオにはいろいろな形があります。パートナーの店舗における常設のショップ・イン・ショップもありますが、注力しているのは、人がたくさん集まる場所に臨時でつくることです。大きなショッピングセンターなどでやっていますし、ロンドンオリンピックでも会期中に大きな店舗を開設しました。

大手家電量販店に専用コーナーを設ける

李英熙●イ・ヨンヒ 1983年延世大学卒業(専攻は英文学、第二専攻はマスコミュニケーション)。89年にノースウェスタン大学ジャーナリズムスクールにて広告科学の修士号取得。ユニリーバ、ロレアルなど消費財企業で19年のキャリアを積んだ後、2007年7月に無線事業マーケティング部門の責任者としてサムスンに入社。2012年に副社長へ昇格した。――今回のS4のマーケティングでは、体験を重視する計画ですね。

ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダ電機などでギャラクシーコーナーを設けてもらいます。体験中心としての先進事例は米国でのベスト・バイとの提携です。全米の1400店でショップ・イン・ショップを大きく構えています。アップルが自社店舗で展開しているのに対し、サムスンはパートナーと協業しています。

ただし、ショップ・イン・ショップは量販店に限られます。通信キャリアのショップでは、サムスンの端末だけを特別に扱うわけにはいかないため、並べて展示せざるをえない。そうなると、たくさんある端末の中に埋もれてしまい、どの端末も似たり寄ったりだと思われてしまう可能性があります。そこで、画面上にデモが流れるようにライブデモを表示するようにしました。こうしたプロモーションにも多額の投資をしています。

――今回、S4を扱うのはドコモのみです。ドコモとの提携は非常に緊密になりましたが、世界的にみてこうした提携はありますか。

ほかの国でもさまざまな事例があります。その国ごとに違うのですが、基本的にはパートナーとウィン-ウィンの関係を築くことにあります。パートナーの要望に応じてフレキシブルに対応するという姿勢はサムスンのDNAに刻まれています。4月末までに世界60カ国で主要キャリアが同時発売したことは、そのパートナーシップの強さを示すものだと思います。

最大市場である米国ではAT&T、Tモバイル、スプリント・ネクステルが4月下旬に発売しており、少し先になりますが、ベライゾンも扱います。キャリア同士は激しくシェア争いしており、プライドも高いため、あまり同じ機種を同時に発売することはない。しかし、サムスンの端末に関しては行っています。

――日本でのシェアは5位。課題をどのように分析していますか。

2012年暦年の基準でみると、ほとんどの国でナンバーワンになっており、例外は米国と日本でした。しかし4月下旬にAT&TなどがS4を発売してからは、まだベライゾンが扱っていないにもかかわらず週間単位でのトップを実現しています。しかも2位のアップルとの差をどんどん広げています。つまり現時点でトップでない国は日本だけです。


NTTドコモから発売するサムスンの新型スマートフォン「ギャラクシーS4」――1位ではない国はほかにもあるように思いますが。

台数ベースではあるかもしれませんが、基本的に金額ベースで見ています。調査会社のデータによって差はありますし、毎日のように変化している指標だと思いますが、サムスンのデータでは日本以外はすべて1位になっています。

米国の場合は1位のアップルと僅差だったため、S4を発売したと同時にトップになれたのですが、日本は1位との差は非常に大きいので簡単ではありません。

消費者に触れてもらう機会が圧倒的に少ない
――それはなぜでしょうか。

日本ではまだまだ課題が多いと思っています。米国では先ほど申したように、全国のベスト・バイにサムスンのショップ・イン・ショップがあり、そこでさまざまなサムスンの家電製品が展示されています。ここでサムスンブランドがいかに優れた製品を出しているか、という世界観を示しています。

対して、日本で販売しているサムスン製品はスマートフォン、ノート、タブレットに限られている。そのため消費者にサムスンの製品に触れてもらう機会が圧倒的に少なかったと思います。

しかし、今回は体験できる場所を増やします。実際にS4を触っていただければ、日本の消費者は製品のよさをわかってくれるはず、と確信しています。日本の消費者の要望を把握して製品開発をしようと努力しており、その情熱は近いうちにわかってもらえると思います。会社としての情熱をメディアに対するコミュニケーション戦略で広げていく努力もします。

顧客サポートについても、まだまだやるべきことがあります。スマートフォンやタブレットは売って終わりではなく、OSのアップグレード、使用方法のコンサルティングなど、接点がずっと持続する製品です。サムスンは販売後のサポートを徹底的に充実させることで評価を高めてきました。しかし、日本は流通体系が異なっていることもあり、顧客サポートができていない。ここが勉強不足、努力不足な点だと認識しています。

――さまざまな施策を打ち切ってもシェアが低ければ深刻でしょうが、そうではなく、これからシェアを伸ばす、ということですね。

サムスンに入社して以降の個人的な経験も踏まえてコメントすると、この会社の持っているポテンシャルはものすごく高い。働いている社員の情熱もあるし、ものすごく熱心に仕事をする。組織的に動く集団的な知能もある。日本市場でもそのことは分かってもらえると思います。

3年前にギャラクシーSを発売するまでは、「サムスンはもう終わり」とささやかれていました。しかし3年で様変わりしました。この間の躍進については、もちろんラッキーだったという面もありますが、多くのサムスン社員が情熱を持って集団としての力を発揮し、それを統率するリーダーシップがあったのも事実です。これから日本でも同じ努力をしていきます。いい結果が近いうちに出るでしょう。

――目指すゴールは日本でもシェア1位になることですか。

もちろんそうです。楽しみにゆっくり見ていてください。いつごろ1位になると思いますか。

ドコモの要望に応え、改善の努力を続ける
――ステップ・バイ・ステップだと思います。一時的に1位になったとしても持続するのは簡単ではありません。

それは大事な点だと思います。パートナーシップはお互いに必要としないと成り立ちません。ドコモさんの要望に応えて、サムスンを必要なパートナーだと感じていただけるように改善の努力をし続けます。

――シェアを引き上げるためにはau、ソフトバンクとの提携強化も必要になるのでは。

サムスンはオープンマインドです。排他的ではありません。サムスン製品を使いたいと考えている消費者に対して平等に製品を提供していくことは、メーカーとしての義務だとも考えています。確かに現在はドコモとの近しい関係があり、満足していただけるよう最大限の努力をしていきます。しかし、ドコモを使っている消費者のみに排他的に提供するような考えは持っていません。

エコシステムは今、オープンになっています。端末そのものをみても、サムスンはグーグルのアンドロイドOSだけでなく第2優先順位として、マイクロソフトのウィンドウズフォンOSを搭載した端末も出しています。排他的な関係を結ぶのではなく、オープンなエコシステムの中で消費者の満足度を引き上げていくことが、最終目的です。

――グーグルのメガネ型端末「グーグル・グラス」が話題になっています。スマートフォンの先にある端末をどのように考えていますか。

機能を提供する端末の形はどんどん変わっていくでしょう。メガネ型だけでなく、ウォッチ型にもなるし、ジャケット型にもなるかもしれません。靴に埋め込まれても不思議ではありません。サムスンではこうしたさまざまなデバイスの間でデータを共有するコンバージェンスの時代になると考えており、他社に先駆けて研究開発をしています。

しかし、そうした時代にもスマートフォンはますます重要になります。すべてのクラウドサービスをコントロールする役割になるでしょう。ポスト・スマホではなく、ハブとしてますます重要になると思います。

――最後の質問です。アップルが昨年9月、iPhone5を発売した際、米国では「The next big thing is already here(アップルの最新機能はすでにサムスンが実現している)」という宣伝をしましたよね。日本でも同じような比較広告を打つ予定はありますか。

米国では直接的な比較広告が好まれます。法律でも社名を挙げて比較することが許されています。事実に基づいた広告を行ったので、サムスンはクールな先端製品であるというポジショニングができました。日本の場合、お客さんが求めているのはそういうコミュニケーションではないと思うので、日本人の好みにあった形で広告展開していきます。

(撮影:尾形 文繁、風閒 仁一郎、鈴木 紳平)


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