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日本の民主党にチャンス到来――フィナンシャル・タイムズ

2009年5月13日(水)09:00
(フィナンシャル・タイムズ 2009年5月11日初出 翻訳gooニュース) 東京=ミュア・ディッキー

小沢一郎氏は1990年初め以来、日本政治を大きく塗り替えようと奮闘してきた。アジア筆頭の民主国家を(わずか11カ月の例外を除いて)過去半世紀にわたって支配してきた自由民主党、かつては最強だった自由民主党を、小沢氏は打倒しようとしてきたのだ。

しかし小沢氏自身のルーツは昔ながらの金権政治にあった。それが、改めて浮き彫りにされてしまった。自民党出身の反逆児だった小沢氏は11日、民主党代表を辞任すると発表せざるを得なくなったのだが、その原因を作ったのは、政治資金集めに関するスキャンダルだったからだ。

世界第2位の経済大国において今から4~5カ月の間に行われる選挙は、日本の政治的命運を決める分水嶺的な戦いになると言われている。その民主党vs自民党の対決の力学はここへ来て、小沢氏が民主党代表の座を去ることで、一気に変容してしまった。

年初の時点では、今年の総選挙は自民党が勝つかどうかというよりは、民主党が負けるかどうかの選挙になるだろう。民主党が負けるとしたらそれは民主党のせいだ——というのが、一部評論家の見方だった。しかし、自分の公設秘書が政治資金集めにまつわる罪状で起訴されても小沢氏は辞任しようとせず、そこから、民主党は本当に負けるかもしれないという状況がにわかに出来してしまったのだ。

小沢氏はあらゆる違法性を強く否定している。しかし疑惑にまみれた建設会社から違法献金を受けていたという疑いは(しかもその建設会社は長年にわたって、自民党の集金システムを支えてきたのだ)、今までと違う新しく、よりクリーンな政治を提供するという民主党のこれまでの主張を損なってしまった。

違法献金の疑惑は加えて、小沢氏自身の政治的ルーツを改めて想起させてしまった。小沢氏がかつて舞台裏の力技を得意とする剛腕の「壊し屋」と呼ばれていたこと、自民党時代は「政界のドン」と呼ばれた党の実力者、故・金丸信氏を師匠としていたことなど、そういうぶり返したくない過去が改めて注目されてしまったのだ。

この間、ひととき満身創痍でほとんど「死に体」扱いされていた麻生太郎首相は、政治的に息を吹き返しつつあった。

小沢氏を支持してきた北海道大学の山口二郎教授(政治学)は、民主党内で小沢氏を支持する動きは、民主党議員たちが連休中に地元にお国入りして有権者と接触したのを機に、雲散霧消してしまったようだと指摘する。

民主党議員たちは皆、地元で有権者からの逆風をもろに浴びてしまい、これが党内に深い不満感を作ってしまったのではないか。民主党が勢いを取り戻すには、小沢氏の辞任は必要なことだった——。山口教授はこう言う。

世論調査も民主党幹部もみな揃いも揃って、「有権者は小沢辞任を求めている」と言うようになっては、小沢氏の党内での立場はもうどうにもならなかった。

小沢代表辞任は民主党にとって恥ずかしい事態ではあるが、民主党にとっては同時に、本物のチャンスでもある。複数党の出身者が集まってできた寄せ集め政党なだけに、結党から10年、一致団結したまとまった政党だと説得力がなかなかもてずにいた民主党にとって、今のこの状態は団結力を示すチャンスでもあるのだ。

活発かつ前向きなトーンで代表選を行えば、それは民主党にとってまたとない絶好のパブリシティーのチャンスとなる。ただし、党内に常にくすぶっている旧自民党議員と旧社会党議員らの対立が、国民注視の前で表面化しすぎれば、パブリシティーはかえってマイナスとなってしまうのだが。

政策研究大学院大学の本田雅俊准教授は自身のブログで11日、「しばらくの間、世論もマスコミも、民主党に注目する」と書いている。「代表交代が奏功すれば民主党に追い風が吹くし、裏目に出れば、小沢氏の辞任は犬死となる」と。「犬死に」というのは、志半ばにして破れて死んでいく武将を表す、日本の伝統的な表現だ。

権力移譲がどれだけスムースに行われたとしても、小沢氏という強力なまとめ役が不在では、民主党は内部の不和を収めるのに苦労するだろうという指摘もある。さらには、2007年参院選での決定的な勝利を民主党にもたらしたとされる小沢氏の選挙必勝術がなくては、民主党は相当に苦労することになるかもしれない。

小沢代表本人も11日の会見で繰り返し、政治家をやめるわけではないと強調していたし、次の代表を支えて「全力で政権交代のために頑張りたい」と力説していた。

「党内が乱れていたのでは、総選挙に勝利することはできません。逆に挙党一致で臨みさえすれば、必ず勝利することができると確信しております」 小沢氏はこう語っていたのだ。


フィナンシャル・タイムズの本サイトFT.comの英文記事はこちら(登録が必要な場合もあります)。

(翻訳・加藤祐子)

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