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「ケータイ」日本飛び出す 海外で普及目指す

デジタルカメラ付きなど独自の発展を遂げたものの、90年代は海外で不振が続いた日本の携帯電話。大陸から遠く離れ、固有の動植物が生息する太平洋上の島になぞらえて「ガラパゴス市場」とも呼ばれてきた日本から「イグアナ・ケータイ」が、中国など海外での普及を目指して再び飛び出した。

 中国・上海の携帯電話販売店。売り場でもっとも目立つ場所に、シャープの液晶テレビ「アクオス」を携帯端末の画面に見立てた模型が置かれている。すでに中国市場でも人気ブランドとなっているアクオスを前面に出し、「高画質ケータイ」をアピールする戦略だ。

 高級クラス6機種の価格は3千〜4千元前後(約4万5千〜6万円)が中心。昨年6月に中国市場に進出したシャープは、これまでに数十万台を売り上げ、「上々なすべり出し」(幹部)という。09年度は委託生産などでコストを抑えた端末も投入する予定で、200万台の大幅な増販を目指す。欧米、中国に続いてブラジルなどへの投入も検討している。

 富士通は今年1月に台湾市場に参入した。NTTドコモと提携している現地の携帯電話会社FETに端末を提供。日本で07年秋に発売した「F905i」をベースに、ソフトを改良した端末で、投資コストを抑えた。価格競争力もあり、韓国や東南アジアなど、ドコモと提携する携帯電話会社のある国々への投入を視野に入れる。

 高機能商品を、欧州市場で問う動きもある。東芝は07年から、欧州を中心に高機能携帯のスマートフォンを販売。今夏にも端末の画面に指でふれたり、端末を振ったり傾けたりしても操作できる機種「TG01」を欧州4カ国を中心に売り出す計画だ。

 日本の携帯端末は、ネット接続やカメラ、ワンセグ視聴、電子マネーと、世界でもまれな多機能・高品質製品として発展してきた。だが、その商品力とは裏腹に、日本メーカーの海外進出は「苦い記憶の連続」(大手メーカー)だった。

 アナログからデジタルに移行した第2世代(2G)で、日本は海外とは異なる独自の通信方式を採用。それにより、日本向けとは異なる仕様の端末の開発が求められ、90年代の海外展開の足かせになった。NTTドコモなど、携帯電話会社が端末を買い取ってくれる日本とは異なり、自ら販売チャンネルを構築しなければならないことも苦戦の要因となった。

 国内市場が伸びている間は海外進出に失敗しても取り戻せたが、電子情報技術産業協会(JEITA)によると、国内の携帯端末の出荷台数は近年、頭打ちが続いている。日本メーカーは飽和状態になった国内から、海外に市場を求めざるを得なくなったわけだ。

 ただ、日本メーカーには、これまでとは違う風が吹いている。中国などアジア各国では今後、大容量のデータを送受信できる第3世代(3G)携帯電話サービスが相次いでスタートする。日本が得意とする動画やゲームの配信などを武器に、今までつかみきれなかった海外の需要をとらえることができるとの期待が膨らむ。3Gの導入でネットに接続するNTTドコモの「iモード」が爆発的に普及した成功体験から、シャープの大畠昌巳執行役員は「日本の得意分野が生かせる」と話す。

 さらなる追い風も。「LTE(ロング・ターム・エボリューション)」と呼ばれ、10年以降に導入される通信規格は日本と海外で同じ通信方式が採用される見通しだ。野村総合研究所の北俊一上級コンサルタントは「日本の携帯の技術や商品性は、海外でも何の問題もない」と指摘する。

 共通の通信方式が実現すれば、多機能・高品質という日本メーカーの強みが生かせる可能性が広がる。06年に中国での販売を休止したパナソニックや、NECも海外への本格的な進出を探っている。(高田寛、大宮司聡、田中美保)


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