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テレビの衰退がケータイの追い風に--元テレビ朝日プロデューサーが市場を分析

永井美智子(編集部)

2009/07/22 23:05  

 2009年を「インターネットコンテンツ元年」と掲げ、モバイルコンテンツの拡充を進めるソフトバンクモバイル。7月22日に開催されたワイヤレスジャパン2009では、同社の取り組みをマーケティング本部 副本部長の蓮実一隆氏が語った。

 蓮実氏は2008年10月にソフトバンクモバイルに入社。それまでは約20年間、テレビ朝日で番組プロデューサーなどを務めてきた。主な担当番組には、「報道ステーション」「ビートたけしのTVタックル」「サンデープロジェクト」「全国一斉IQテスト」などがあるという。

 長年テレビ番組の制作に携わってきた経験から、テレビの衰退が携帯電話には追い風になっていると語る。例えば、ソフトバンクモバイルが毎月1回開催しているお笑いバトル「S-1バトル」だ。

 S-1バトルを始めたのは、「老若男女誰でもそこそこ楽しめる」(蓮実氏)という点と、制作コストの低さが魅力だったという。テレビでもお笑い番組が増えているが、「新人のお笑い芸人であれば、テレビに出ても1回の出演料は5万円から10万円」(蓮実氏)。オリジナルコンテンツを増やしたいソフトバンクモバイルにとって、制作しやすいコンテンツであったようだ。

 特筆すべきは、日本テレビの深夜番組「億万笑者!~S-1バトルへの道~」で、S-1バトルの裏側を紹介している点だという。「今まで、テレビが20%しかシェアのない携帯電話会社のコンテンツをプロモーションするということはなかったが、時代が変わった。『放送ではあまり儲からない』というテレビ局の判断があった」(蓮実氏)。実際、蓮見氏もテレビ局勤務時代は、「『このままでは5年後はない』と、毎晩みんなで飲みながら話していた」といい、制作現場の持つ危機感が、番組の実現につながったとのことだ。

視聴率の取れないコンテンツもケータイなら可能

 このほか、ソフトバンクモバイルが始めた「選べるかんたん動画」「かんたんミュージック」は、テレビ局ではできないコンテンツをユーザーに届けていると語る。

  • 「選べるかんたん動画」の利用イメージ(野球の場合)

    (C)Fukuoka SoftBank HAWKS Corp.

 選べるかんたん動画は、好みのジャンルの動画をメールで配信するサービス。特に力を入れているのが野球で、全プロ野球チームについて、そのチームが勝利したときだけ動画ニュースを配信するサービスを提供している。これは、テレビではできないサービスだと蓮実氏は言う。

 なぜなら、現在野球のニュースは、視聴率が取れないからだ。「(ニュース番組を制作していたときには)、どれだけ野球のコーナーを短くするかという議論をえんえんとやっていた。巨人でも、1分やったら『どれだけ視聴率を下げるんだ』と言われた。人気のないチームの場合は5秒で何とかしろ、と言われる。しかしそれでは野球ファンは納得できない」(蓮実氏)。選べるかんたん動画であれば、自分の好きなチームのニュースをじっくり見られるというのだ。

かんたんミュージックも同様だ。このサービスは、J-POPなどの音楽情報番組をメールで配信するというもの。テレビ番組で少なくなった音楽情報を補完できるという。
  • 「かんたんミュージック」の利用イメージ

 「テレビでランキング番組がなくなったのは、歌番組で一番視聴率が低いのが、歌手が歌っている場面だから。びっくりするくらい視聴率が低いので、『HEY!HEY!HEY!』も『うたばん』も単なるトーク番組になってしまっている。視聴率を上げるという命題に従えばそうならざるを得ない。結局、視聴者の嗜好性が分かれてしまって、多くの人が同じものを聞くということがなくなった。そういう時代にマスメディアが誘導した」(蓮実氏)

 テレビで見られない音楽ランキングも、携帯電話であればユーザーのもとに届けられる。また、メールから1クリックで楽曲購入画面に飛べるため、携帯電話にあまり慣れていない層でも購入しやすいのだという。「メールは原始的だけれども、有効だ」(蓮実氏)

 これらのコンテンツはいずれも、テレビなどで使われたコンテンツを二次利用するのではなく、オリジナルコンテンツとして独自に制作している。「テレビが(世の中を)牛耳っていた時代は、携帯電話はテレビの“お下がり”にならざるを得なかったが、今後はそれを脱出し、アグリゲートメディアになっていくだろう」と蓮実氏はみる。

 「テレビが登場したころは、映画業界からバカにされていたが、スポーツや連続ドラマなどをやってみて、映画ではできないことに気づいた。同じことがテレビからウェブ、モバイルでも起きている」(蓮実氏)。携帯電話ならではのコンテンツを制作し、配信していくことで裾野を広げ、テレビなどのオールドメディアからユーザーを奪って成長する時代の始まり――それこそが「インターネットコンテンツ元年」の意味であると蓮実氏は解説していた。


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